しかし、朽木屋敷のたたずまい、そこに住む若狭(京マチ子)の表情、語り口、仕草、振る舞い、そして、源十郎(森雅之)が朽木屋敷から国の家へ戻り、囲炉裏端で鍋の用意をしている妻の宮木(田中絹代)と会話を交わすシーンは文句無しに凄いです。
話と画面の強さとはおすすめ度
★★★★★
この映画を見ていると 本当に溜息が出てくる。今の邦画はこんな映画を作ることはできないに違いないと思ってしまって。
とにかく美しい映画だ。その美しさは 単なる映像美には終わらず 原作を踏まえた不気味さに満ちている。
雨月物語という怪異譚を扱った いわばホラー映画であると乱暴に言いきってしまうことも出来るわけだが そんな分類分けの意味も感じさせないほどの格調である。
海外で溝口という名前が名高いのもよくわかる。実際 この頃のクロサワやミゾグチの映画は どの国の人が見ても 面白いに違いないと思う。それは単なる日本趣味にはとどまらない普遍性を獲得しているからだ。邦画にそんな時代があったことを誇りに思う一方 今の日本には かような人材がいないような気がしてならない。
映画というものは変わった。SFXに代表される 今の映画の撮影技術の進歩はすさまじい。但し 技術に溺れて 小手先で終わっている映画が実に多いと思う。これは邦画だけではなく 特にハリウッドの作品に強く感じる。
要は 脚本が練られておらず 弱い脚本を強い画面で補っているにすぎないと思うのだ。それに比べると 本作は 脚本も画面も本当に強い。この強靭さを愛でると共に 現代の映像作家にも 同様の才気を求めてしまうのだ。
美しい、美しい、美しい。おすすめ度
★★★★★
物の怪が町を徘徊するような、文学的平安時代の雰囲気を見事に捉えた美しい作品。テーマはずばり、愛、です。この監督はフランスで人気があるが、フィルムノワールのジャポネズムがあり、文学的だからだろうと思う。最後のシーンは特に物悲しく、感動する。不倫をしている男には、やや堪えるのではないでしょうか。とにかく不思議で美しいので御覧あれ。傑作の1つです。
もう創れない美しい映画おすすめ度
★★★★★
溝口健二の作品には独特の品格があるように思います。彼の性格によるのでしょうが、時代背景も影響しているのかもしれません。この映画も上品な芸術を観た後に感じる清涼感があります。現在もこれからも創れない映画のような気がします。
京マチ子の亡霊が後退りしながら消えてゆくシーンも流れるような美しさがあります。
こういう作品を観ると、名作というのは観客動員数(つまり興行収益)ばかりを気にする風潮の下では生まれないとつくづく感じます。
凄いの一言
おすすめ度 ★★★★★
全般的に言うと初心者向けだと思います
。出来は今更ながら言うまでもなく素晴らしい。
ホント満点を付けても良い出来です。