私は共感しましたおすすめ度
★★★★★
『ナラタージュ』はハードカバーでも持っていたけれど、文庫でも何故か買ってしまいました。
ハードカバーで買ったときも文庫として発売されて本屋さんで手に取ったときも、何故かとてもこの本に惹かれました。
この本のすごいところは、あんなに難しくて複雑な感情を上手く文章にしているところ。
ああいう書き方ができるのはこの作家さんだからだと思います。
精神的につながってしまう人と出会う、ということは恐ろしく幸福なことで、しかし人生を狂わせることになるかもしれないという危険と出会ってしまうことと、ほぼ同じだと思います。
こういった考えが伝わるひとは少ないかもしれないけれど、本当にそういうことなのです。
そういうことがほんとうに上手く描かれています。
この作品の批評のひとつに、無駄な描写が多い、ということがよく挙げられていますが、無駄ではないのです。
泉の感情を表現するのにはもしかしたらまだまだ足りないくらいかもしれないです。
こんな恋愛小説にはなかなか出会えないと思います。
ぜひ、読んでみてください。
切ない、というのとはちょっと違うのだけど・・・おすすめ度
★★★★☆
66歳男性からこの本を貰い、売れたとかそういうことは全く知らず読んだ。
最初は「取り立ててなんてことない青春恋愛小説」という感じで淡々と、
訥々と静かに話が進んでゆくが、途中から「動」に変わる。
主人公・泉と彼女の高校時代の教師、葉山先生との「愛」が軸なのだが、
正直なところ、きれいごと過ぎる感が否めない。
それが読んでいてもどかしい。
愛の形なんて人それぞれだし、人を好きになるには理由なんてないと
言ってしまえばそれまでなのだが。
葉山先生という人が、私にも良く分からなかった。
ずるい男であるのは間違いないが。
ただ、読後にある種の感動とも言える余韻が残った。
泉は一生、「その思い」を抱えて生きて行くのだろう。
それがどういうことなのか分かるのは、ある程度年齢を重ねてからだと思うので
もし学生時代に読んだとしたら、また違った読後感があるように思える。
よくもわるくも、人を刺激する作品おすすめ度
★★★★☆
売れた本はつい採点するような意地悪な態度で読んでしまう。本書については、文章はさほど練られていないと感じたし、首をかしげる箇所も少なくなかったけれど、案外ぐぐっと引き込まれてしまった。特に前半、主人公・泉が思いを寄せる高校教師・葉山先生と再会、泉に好意をもつ小野君も現れて・・・スリリングで一気にページを繰った。後半がその期待感に十分に応えてくれるものだったかと言えば、好みもあるかと思うが・・・残念だった。わたしには葉山先生という人がよくわからない。泉も、潔癖そうに見えてある意味危険な天然系魔性タイプというのか、気持ちを重ねにくいキャラクターだった。小野君は前半とびきり感じよく描かれ(うっかり恋しそうになる)、後半で思い切り落とされる。こういう男の子もいるなと思い当たらないでもないけれど、小野君が泉と葉山先生のストーリーのための道具に見えてしまって興ざめした。
ところで単行本のときの惹句、「ごまかすことも、そらすこともできない―二十歳の恋」が印象に残っていたけれど、文庫では、初版の帯コピーが「壊れるほどに、愛した。すべての恋する者たちへ― 祈りにも似た、絶唱の恋愛文学」となっている。「絶唱」とはなんとも古めかしい。若い作家の作品にしては落ち着いた言い回しが使われているので、いっそのこと・・・と惹句もレトロ調にしたということか。意図をつかみかねた。若い人には新鮮でいいのだろうか?
話がわき道にそれたが、人を刺激する作品だと思う。よく売れたこと、そしてすごく評価する人と逆の人、両方いたのが頷ける。
買うしかない!
おすすめ度 ★★★★★
出来は非常に良いです。ファンなら買って間違いなく損のない品ですね。
感動やドキドキ感を手元に置いて、私同様に何時でも手に取って思い返して頂きたいと願います。